知人の勧めで本書を読みましたが、正直圧倒されてしまいました。

著者については詳しく知らないのですが、ウィキペディアで調べると、写真家そしてライターさんという肩書の方です。

私は、建築家(名乗っているだけで設計士見習い)ですが、写真を趣味にしているということもあり、この写真家さんのTwitterはフォローしていました。

書籍も出している、そんな情報を知人から教えてもらい、価値観を広げられたら。くらいの気持ちでAmazonでポチっとしました。(便利な世の中なものです。)

本質とは何かを考える

写真家さんの書籍を読んだのは初めてでした。私ももっともっと視野を広げる努力をする必要があるなと感じてしまいましたが、そもそも写真家さんとか知ったかのように言っていますが、その業界自体には全く無知です。

ただ、少しでも写真が上手くなれればな、カメラってかっこいいな、こんな程度しか感覚を持ち合わせていません。

この本を読んで勝手に思ったのですが、

写真を撮ることは、物事の本質と向き合うことなんだなということです。

仮にもクリエイターの端くれとして、なるべく物事の本質を考えるように意識しているつもりですが、それを一般的なQ&A方式で相談者さんにアンサーを提示し、著者の考え方を伝える形式となっており、そしてその考え方が様々な示唆を与えてくれる内容となっています。(実際、一般的なQではないかもしれませんが。)

きっと、写真というカジュアルな媒体でプロとなる方ですので、映し出すものの構成や画角、色味が上手いとかそんなレベルでは当然なくて、写真というものが映し出すものの本質って何なんだろう、そこに存在している風景や生活の本質って何なんだろう、そうした自問自答の繰り返しがロジックとなり、写真から生まれているストーリーや、人の感情を読み解く力となっているんだ、そんなことを感じてやみません。

と、ここまで勝手気ままに書いてしまいましたが、

本書は、写真家という肩書である著者に向けられた様々な質問に回答するという構成であり、その質問もなぜ著者にそんな質問をするんだろうと素直に思ってしまう内容なのですが、著者である幡野広志さんの回答が凄すぎて、本になっちゃったというものです。

中盤くらいから、質問の回答を読む前に私自身だったらどう考えるか、なんかを適当に考えてしまい、その上で著者の回答を読み進めるなんてこともしちゃうくらい、とにかく凄い。

なんでそんなに凄いのか。

どこにその魅力があるのか。

それは、どんな悩みも「人」、言い換えれば「対人関係」が本題であり、その質問の文脈から、質問者の考え方までもを読み解いたうえで回答していく著者の意見に、人の感情や感覚を読み解く鋭さを痛感すると共に、写真家という職業が何を写し出しているのか、までを考えさせる「説得力」にあるのだと思います。

表面的な言葉と真意

3つほど私自身が考えられさせたもの(あんまり言いたくない表現ですが感動したもの)をメモします。

というよりも、読んで印象に残っているものですが、読み返しながらこの記事を書いてないので、ちょっと違ったらすいません。

1つ目は、大切という言葉は邪魔という意味を含んでいる。

「日常会話で大切ってそこまで使わないよね。でも綺麗に言葉を表現しようとすると、途端に大切という言葉が出てくる。

結局自分を偽っていて、大切を邪魔として言い換えるとその人の真意が良く分かる。」的なことだったと記憶しています。

一応、不倫関係の相談に対してよくあるワードらしいので、全ての大切がこれに当てはまるわけではないと私自身理解しているつもりですが、ポジティブなワードとネガティブなワード、この読み違いともいえる言い換えが、時に人の本質を表すって面白いです。

あまり直接関係ないですが、建築業界でも、建物の模型や図面をひっくり返す、90°回転させてみる、といった、根本的に向きを変えることで、なぜかデザインが飛躍しつつ成り立つことがあります。そんな共通点を感じました。

2つ目は、幸せは笑顔が生まれ、互いが幸せならば互いに笑顔だ。

確か、幸せの価値観は人それぞれで、誹謗中傷する相手にとっては、誹謗中傷できる相手がいることが幸せで、それはしょうがない。なので、幸せの価値観が一致できる相手と関わるようにする。というような内容だったと思います。

これも、余計な(というと怒られるかもしれませんが。)悩みを全て前向きに捉えられる気がして、とても好感が持てました。

3つ目は、ウソをつかない。

「平成が終わりますが如何ですか?」「少しさみしいです。」

みないな街灯インタビューがあり、ウソつけ!と突っ込んでいる文面で、正直笑ってしまいました。

これは、私自身もとても共感するのですが、ウソをつくというよりも、自分の考えを伝えられない人が多いという社会的な問題を含んでいることに対する警鐘でもあると思いました。

大学生の頃、建築学を学んでいるわけですが、社会性とは何か?を常に問われます。

それは、建物をデザインし表現することが設計者の自己満足では意味がなく、その建物によって社会のどんな課題に向き合っているのか、を問われていると私は理解しています。

もちろん、課題のスケールを大きくすればするほど抽象的になってしまうので、日常にある疑問や矛盾に日頃からどれだけ向き合えている、感じ取れている、気づいているかが重要なのですが、

ある時、同級生のA君(仮名)が、環境問題的なことをキーワードにしたとき、教授からGoogleで調べたようなことを幾ら言われても何も響かないといったお叱りを受けていました。

ここに、自分自身で考える力の本質があるなと思い、今でも覚えていますし意識している言葉です。

「協調性ではなく創造性」という言葉が本書に出てきますが、私は、この創造性とは何か?

に対して、ウソをつかない、ということが、その一歩になると考えています。

自分自身で考え、述べることは決して簡単ではありません。というより、そういう機会がない教育を小~高まで行っている気がします。

本書でも、インプットがないのに突然アウトプットさせる日本の教育に懐疑的である旨の内容があったと記憶しています。

私は、幸いなことに大学での建築学という学問から、そのきっかけは学ばせて頂いた気がしますが、まだまだ未熟な域です。

創造性という言葉が出てくると、今度は仮説や見立てというワードでもっと語りたくなるのですが、それは置いといて、

「ウソをつかない」ことは、それほどに重要なことだと私は感じており、言い換えれば、自分の言葉で何かを話すことがとても大切ということです。

(あれ、大切って言葉使っちゃった。深層心理で邪魔なのか?)

最後に

今回、ちょっとしたきっかけで本書を読みましたが、「ぼくたちが選べなかったことを、選びなおすために。」という同著本(同著本って日本語ないかも。重複表現かもしれませんがご容赦を。)も購入してしまいました。

また一つ、楽しみが!

皆様もぜひ、誰かの思想に出会える本(自己啓発本ではなく)を読んでみてください。

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