今回は、建築物の設計に関して、「基本設計」と「実施設計」という2つの言葉の意味を紹介します。
これから家を建てようと考えている方や、設計士として社会人デビューしようとしている方、そんな方々向けの内容です。
基本設計とは?
基本設計は、建物の概要を決めていく作業です。
敷地に対して、どのような配置でどんな建物をつくるのか、この基本設計で決めていきます。
0から1を生み出す作業ですので、とてもクリエイティブであり、知識や経験の差が大きく出てくる部分でもあります。
基本設計の成果物として、基本設計図書があり、その内容はだいたいこんな感じです。
・配置図、平面図、断面図、立面図、屋根伏図、防災図、建具表、一部平面詳細図、矩計図
それぞれの図面の意味は、また別の記事で紹介してます。
基本設計では、
建物の配置や間取り、外壁の構成、そして法適合性等を検証します。
これだけだと淡々と仕事として進みそうですが、
実際は事業主(建築主)さんの要望や変更等も絡みますので、
打合せの度に調整し続けているような感覚で、
あっという間にこのフェーズが終わってしまいます。
この段階でデザインの方向性を決めておくことで、
次の実施設計の善し悪しが大きく変わります。
実施設計とは?
基本設計図書が完成したら、いよいよ実施設計です。
実施設計では、基本設計の内容からより詳細な内容を検討します。
例えば、基本設計では平面図といってもレイアウトを建物全体で考えます。
つまり、図面には建物全体の平面図が記載されます。
しかし、実施設計となると、事務所部分のみを拡大して作図する、トイレ部分のみを拡大して作図する等、その場所が具体的にどういう材料で構成されているのか、という部分まで図面に表す必要があります。
このフェーズで作成される実施設計図書は、設計フェーズが完了した後の積算(金額出し)の基準になる為、
金額に漏れがないよう、細かな一つ一つの部材まで表現します。
実施設計図で新たに作成される図面は、こんな感じです。
・平面詳細図、階段詳細図、矩計図、天井伏図、雑詳細図、展開図、サイン図、外構図、面積表、防災表
物件によって、
さらに図面の種類が増えたりします。
言い換えれば、建物の金額を確定させる為に必要な情報は、すべて実施設計図に記載する必要があります。
ここまでに紹介した図面がなくてはならないのではなく、一般に、建物を表す図面として先程の図面が必要です。
特定の図面が無くても問題のない建物、逆にもっと別な図面が必要な建物等、規模によって様々です。
この辺りに、慣れや経験値が必要になります。
まとめ
基本設計とは、「基本設計図書」を纏める為に、建物の法的な規制、間取りの確定、建物位置の確定、建物高さの確定を行います。
実施設計とは、「実施設計図書」を纏める為に、基本設計図書を基とした詳細図の作成、納まりの検討を行い、建物の見積りが作成出来るレベルの図面として纏める作業を行います。
基本設計がしっかりと出来てないと、実施設計で色々な不都合が生じます。
また、基本設計と実施設計の精度が、現場が始まってからの出来栄えや変更対応の柔軟さ、そして完成する建物の善し悪しを大きく左右します。
家を建てる一般の方々には、2つの設計工程があるということ、
これから設計を実務で行う方々には、基本設計と実施設計の役割の違いを、
きちんと理解して、素晴らしい建物を生み出すことを願っています。